最近はブログなどで、好きなスポーツについて積極的に情報発信される方も増えてきました。
新聞社に約10年ほど勤め、スポーツ記者はそのうち4年ほど担当してきた立場から、How to ではなく、新聞ではこういう風に記事を書いているよ、というのを書いていきたいと思います。なお、スポーツ紙の書き方ではなく、あくまでも一般紙のスポーツ面を担当する記者の書き方ということになります。
スポーツ記事の構成
まず、スポーツ記事の構成を見てみます。
- 前文
- 戦評(ない場合もある。長距離走、駅伝などではレース経過)
- 記録
- 囲み(試合の要点を書くメインの記事)
基本はこれらに分けられます。
前文では大会名と開催日時・場所、結果、次戦の予定といった必要情報を書きます。
戦評は試合経過を短く絞り混んで書き、最後に敗れた側の敗因を添えます。
記録は(東京0ー1神奈川)のように、結果を端的に表すものです。
囲みがメインコンテンツとなる記事で、記者が試合を見て勝敗を分けたポイントや、そこに至ることになったこれまでの選手やチームの背景などを書きます。本記事ではこの囲みの書き方について解説します。
最重要ポイントーダイジェストではなく、ハイライト
スポーツの囲み記事の基本中の基本として、ダイジェストではなくハイライトという鉄則があります。
試合の流れをつらつらと囲み記事の中で書いてしまうのは、一番大きな失敗とされています。書かないといけないのはあくまでも、勝敗のポイントとなった場面だけです。このポイントだけを原稿用紙1枚分ほど(役500字)に集約して書きます。
2009年に日本が連覇を果たしたWBC決勝で、日本が韓国を破った試合を例に書き方を説明したいと思います。
【悪い例】
両チームとも先発投手が抜群の立ち上がりを見せ、1点を争う好ゲームの様相を見せた。
それでも日本は三回に走者を得点圏に送ると、内川が先制の一打を放ってリードを奪った。
その後韓国に追いつかれたものの、七回と八回に1点ずつ加え、3ー2とリードし最終回を迎えた。
だが日本に対して強いライバル心を燃やす韓国。抑えのダルビッシュを攻めたて1点を奪い、土壇場で追い付く。
韓国に同点を許し、劣勢ムードの中で侍ジャパンの救世主となったのが、イチローだった。
内川と岩村でつくった2死ニ、三塁のチャンスで千両役者は奮い立った。「日本中がこれを見ているんだろうな、と。ここで打ったらとんでもないことになる」
韓国の守護神、林の速球をとらえると、センター前に弾き返す2点打。日本の連覇を安打製造機らしい痛烈なあたりで決めた。
「これまでの野球人生で最高の一打でした」。淡々と安打を積み上げてきたレジェンドが、歓喜の余韻に浸った。
【良い例】
世界一まであと1アウトとなったところで、日本は韓国に同点を許した。押せ押せの韓国。劣勢ムードの中で侍ジャパンの救世主となったのが、イチローだった。
十回表、内川と岩村でつくった2死ニ、三塁のチャンス。千両役者は奮い立った。「日本中がこれを見ているんだろうな、と。ここで打ったらとんでもないことになる」
韓国の守護神、林が持ち前の速球と高速スライダーで厳しくコーナーを攻める。それでもイチローは慌てず、カットで甘い球を待った。
粘りに粘って迎えた8球目。林の渾身の速球をとらえると、センター前に弾き返す2点打。球場だけでなく、日本中が会心の一振りに沸き立った。ディフェンディングチャンピオンの連覇を、安打製造機らしい美しいセンター前で決めた。
今大会はチャンスに打てず、スランプに苦しんだ。「頭と体の感覚が合っていない。実戦の中でアジャストしていくしかない」。一流だからこそなせる技の極みを、大一番で発揮してみせた。
「これまでの野球人生で最高の一打でした」。感情を露わにすることなく、淡々と安打を積み上げてきたレジェンドが、歓喜の余韻に浸った。
※イチロー選手のコメントは想像で書いてます
ダイジェストは戦評か前文に
そうはいっても試合経過やダイジェストを盛り込まないと、囲み記事が理解できない、という思いもあると思います。そういう場合は戦評や前文に試合経過を書き分けています。スペースに限りのある新聞では、この「書き分け」が重要です。ひとつの記事の行数が増えると、文字だらけになり、読者の注目を引けなくなるため、一生懸命に書いたものが読まれなくなるかもしれないからです。
実際の記事で品定めを
上記の書き方は、現役記者でも書けていない場合がけっこう多いです。実際の紙面でハイライトが書けているか、読む立場からぜひ品定めしてみてください。
最新版として、スポーツ記事を書く要点をまとめました。ぜひ読んでみてくださいね。
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