Yahoo!などのポータルサイトはもちろん、新聞やテレビなどでさまざまなジャンルの記事を見る機会が増えたと思います。特に最近は外出自粛もある中で、わたしが運営に携わるwebサイトのニュースのアクセス数も増加傾向です。
数多くのニュースがある中、多くの関心を集めるのが芸能やエンタメの動向、テレビなどメディアでの有名人の発言を伝える記事です。特に最近賛否を集めるのがテレビのコメンテーターなどの発言を文字起こしした記事。テレビを見て、その発言を伝えるだけで取材のコストはかからないし、多くのページビュー(PV)を集められるので、特にスポーツ紙や女性誌にとってはありがたいコンテンツとなっています。
これまで新聞の読み方やスポーツ記事の書き方などを書いてきました。
ですが、全部が全部いい記事というわけではありません。10年ほど新聞社に勤め、記者経験があるわたしがおすすめしない、実際に配信されたテレビの文字起こし記事やツイートを引用した記事を基に、避けるべき記事の作り方をお伝えしたいと思います。特にデイリースポーツで多く見られたので、その例を2つ、引用しながら説明します。
書き手の感想を添える
誰かの発言やニュースを伝えるとき、記事を書く人自身がその発言に対して、どう感じたのかを書いてはいけません。以下がデイリースポーツの記事の引用です。
「背が高い、スタイルがええ、男前、賢い、学歴がある。もう何もいらんわ。そんなんがない人は、ちょっと女の子にモテたいとか、いやらしい心が起こるけど、あの人は欠けてる部分が何もない」と完璧な人物像をたたえた。
デイリースポーツ 吉村知事は「大阪だけじゃない。日本の吉村」トミーズ雅が絶賛「欠けてる部分何もない」
これはトミーズ雅さんが、大阪府の吉村洋文知事についてテレビの情報番組で語ったことの文字起こし記事ですが、デイリーの記者は発言の最後を『完璧な人物像をたたえた』で締めています。これはトミーズの雅さんが、「吉村知事は完璧な人物像やで」と言ったわけではなく、トミーズ雅さんの言った内容を聞いた記者が「完璧な人物像を言ってる」と受け取り書いています。これはやってはいけません。
ではどう書けばいいかというと、
「…欠けてる部分が何もない」と吉村知事の人物像を評した−などとしなければなりません。
記事に書いていない要素を見出しに採用する
以下の記事もデイリースポーツからです。まず見出しは次のようになっており、その下に記事を引用します。
大阪自民議員が大炎上…吉村知事らの国難対策を批判し、秒殺される 「謝れ」酷評殺到
岡下氏は政権与党議員としてコロナ対策の責任を負うが、自民が野党である大阪府市の緊急対処について、17日付ツイッターで「中国に防護服を送り大阪の医療従事者には雨ガッパ…そうなる前にマスク等も含め、なぜ補充・備蓄してこなかったのか?」と批判。同じ大阪自民の宗清皇一衆院議員が「中国に送ったからなくなったのか?大阪府には説明がもとめられますね。医療現場では本当に不足していると聞いてます」と呼応した。
これに、吉村知事がツイッターで「大阪の需要でいえば、医療用マスクと防護服の必要枚数は、月約30万枚、合計60万枚。大阪が中国に援助送付した防護服枚数は合計1万枚、大阪が中国から援助送付を受けた医療用マスクは合計7万枚。むしろ増えてる。送付と医療資源不足は因果関係なし」と説明し、「天下の与党国会議員が印象操作は情けない」と指摘した。
さらに「だいたいこの国難の時期に大阪自民党の国会議員が呑気なこと言ってられるのも全部税金で保護された安全地帯にいるからだろ。国会議員は給料ゼロ、文通費ゼロ、公設秘書の補助ゼロ、議員会館事務所と議員宿舎は時価で家賃発生でやってみろ。国民は今そういう状況なんだよ」とバッサリと斬り返された。
デイリースポーツ 大阪自民議員が大炎上…吉村知事らの国難対策を批判し、秒殺される 「謝れ」酷評殺到
ここでは、さきほどやってはいけないことの一つ目として紹介した書き手の感想を添えるという禁じ手を、最後の段落の締め「…とバッサリと斬り返された」で使ってしまっています。バッサリと斬り返された、と捉えたのはあくまでこの記事を書いた記者でしかないです。それだけではなく、見出しに「吉村知事らの国難対策を批判し、秒殺される」とありますが、秒殺したというのは記事中のどこにあるんでしょうか。全く見当たりません。こういう記事や見出しは絶対に真似してはいけません。
この記事で見出しをつけるのであれば「自民議員の批判、大阪府知事がSNSで反論」ぐらいでしょう。
過激であれば読まれる問題
ネット記事ではどうしても、アクセスを稼ぐために記事の内容も見出しも先鋭的になりがちです。ただ、そこに主観や脚色を入れてはいけません。ましてや、プロのメディアであれば尚更です。これからこういったテレビの書き起こし記事を読む機会があれば、ぜひ書かれ方にも注目してみてください。
またブログ等で記事を書く場合は、何が起きたかを伝える記事と、起きたことに対してどう思うかという記事は、別エントリーにする、見出しで区切るなど、混同しないようにすると読みやすくミスリードを避けることができると思います。列記した注意点をぜひ心に留めておいていただけるとうれしいです。
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